ウイルス消毒に適したエタノール消毒とは?正しい使用方法と基礎知識

2020年はコロナウイルスにより消毒液の需要が大きく上がりました。

これまでは業務用のイメージが強かった消毒液ですが、今ではスーパー・薬局・飲食店などの商業施設で販売や利用が急増し、一般向けの消毒液も多く出回るようになっています。

ウイルスの消毒や殺菌で1番使われているのはエタノール消毒液です。

エタノールは揮発性が高く無色液体のアルコールの一種となります。

ウイルス消毒の消毒液として1番使われている理由は、最も安全性が高く、なおかつ十分な消毒効果が期待できるからです。

では、実際のところ、エタノール消毒にはどういった効果があるのでしょう。

この記事では「なぜ消毒液にエタノールが使われるのか」「エタノール濃度による効果の違い」「購入・使用時の注意点」について解説していきます。

この記事を最後まで読んだあなたは、これまで以上に安心してエタノール消毒を使うことができるようになるでしょう。

目次

消毒に類似する言葉

ウイルスや細菌が人的被害を与えないためにする対策として、多くの場面では「消毒」という言葉が用いられます。

しかし「消毒」の正しい意味をご存知でしょうか。

おそらく自信を持って説明できる方は少ないと思います。

消毒に類似する言葉(除菌・殺菌・滅菌・抗菌)は多く存在しますので、以下消毒をはじめそれぞれの言葉の定義についてご説明していきます。

ウイルスに使用する消毒のイメージ

消毒とは

消毒とは「病原体を人に害のない程度にする」ことを指します。

無毒化することが目的なので、ウイルスや細菌は死滅していません。

ですが、病原体となるウイルスや細菌を人に危害のない程度まで遠ざけたり、病原体の感染力を不活性化させる効果までは十分にあります。

「消毒されているものは人への危害がない」ということから、多くの人が接する場面では消毒行為が行われているのです。

消毒の方法としては、エタノール消毒を始めとする化学的消毒以外にも、熱湯をかけて消毒する物理的消毒という方法があります。

除菌とは

除菌とは「病原体となるウイルスや細菌を減らす」という意味です。

菌を殺さなくても減らせればいいとされ、しかも「何パーセント以上の菌を減らす」という数値的な定義もありません。

これだけ聞くと「除菌に効果はあるのか?」と思われる方もいるかもしれません。

ですが、菌の数が減るということは同時に人が接触するウイルスや細菌の数も減ることになるため、感染の拡大や発症を防ぐことにつながります。

また、除菌効果の表示がされているアルコールスプレーや洗剤などの商品は薬事法という法律から、医薬品でないものは殺菌や消毒を表示することができないという決まりになっています。

そのため、殺菌や消毒効果があったとしても商品には「除菌」という表示がされています。

殺菌とは

殺菌とは文字通り「ウイルスや細菌を完全に死滅させる」ことを指します。

ただし、死滅させる菌の種類や量に明確な定義はされていません。

そのため、全部でなくても一部の菌が殺せていれば、殺菌効果があるといえるのです。

例えば、「殺菌効果」をうたっている商品が2種類あったとしても殺菌できる菌が異なる場合や殺菌できる量に違いがある可能性は十分にあります。

滅菌とは

滅菌は「有害無害を問わず、全ての菌を死滅・除去する」ことを指します。

その場所や物を限りなく無菌状態に近づけることを目的として行われます。

滅菌の定義は「菌の残量が元の100万分の1以下になった状態」と明確にされています。

滅菌が必要な場所としては、病院の手術室や抗がん剤治療を受ける患者さんの病室などがあります。

滅菌はものや器材に対して行うものであり、人に対してすることはできません。

抗菌とは

抗菌とは「菌の繁殖を抑える効果」を指します。

例えば、キッチン・トイレ・お風呂などは湿気が多く菌が繁殖しやすい環境にあるため、そのような場所に抗菌作用を施すことで菌の繁殖を減らすことができるのです。

ただし、抗菌できる菌の種類や量・範囲などの定義はされていません。

また、抗菌はあらかじめ菌が住みにくい環境を作るということが定義にあるため、後からウイルスや細菌などの病原体を殺したり除去する効果はなく、あくまでも「菌の繁殖を減らす」ことをさします。

ウイルスや細菌に対するエタノール消毒の作用とは

では次に、エタノール消毒がウイルスや細菌に効果があるというメカニズムについて解説します。

メカニズムというと少し難しく感じるかもしれませんが、エタノールの作用は非常にシンプルなのでご安心ください。

ウイルスや細菌に対するエタノール消毒の作用イメージ

ウイルスに対するエタノール消毒の作用

ウイルスに対して、エタノール消毒が効果を発揮するものとそうでないものに分かれます。

その理由としてエタノール消毒は、エンベロープという脂質でできた膜を持つウイルスに対しては、アルコールによってその膜を壊すことができるからです。

エンベロープを壊されたウイルスはダメージが与えられるため、感染力が弱まるというメカニズムになっています。

つまり、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどのエンベロープをもつウイルスに対してエタノール消毒は効果を発揮しますが、ノロウイルスやロタウイルスなどのエンベロープを持たないウイルスにはアルコール消毒の効果は薄いのです。

細菌に対するエタノール消毒の作用

エタノールの分子は、細菌が持っている細胞膜を通り抜けることができます。

そのため、アルコールが細胞の中に入り、性質を変化させて細菌が死滅するというメカニズムとなります。

以上のメカニズムから、細菌は細胞膜を持つ生物である理由からエタノール消毒は多くの細菌に対して効果を発揮します。

特に、病原性大腸菌・黄色ブドウ球菌・腸炎ビブリオ・サルモネラのような食中毒菌に対しては瞬間的に効果を発揮します。

実用性の高いウイルス消毒ならエタノール消毒液

エタノール消毒液以外にも、消毒や除菌をするための手段はいくつかあります。

様々な選択肢がある中で、エタノール消毒における効果はどのようなものなのでしょう。

以下、表にまとめました。

ウイルス消毒に扱う消毒液の使用用途表

*◯は効果あり、×は効果なしもしくは、人への危険性あり

ウイルスや細菌を含むものに関しては、どの手段でも消毒効果が期待できます。

ただし、人に対して危害の少ない手段となると水および石鹸での洗浄かエタノール消毒の2点に限られます。

では、水や石鹸での手洗いとエタノールを使っての手指消毒ではどちらが効果があるのでしょう。

これは消毒効果の即効性だけで見るとエタノール消毒の方が優れているのですが刺激が強い分、肌へのダメージも大きくなる可能性が考えられます。

多くの医師が水と石鹸での手洗いを推奨していますが、その理由は水道水と石鹸が肌に与えるダメージが少ないことが原因でしょう。

熱湯ではウイルスや細菌の消毒ができたとしても火傷をしてしまいますし、次亜塩素酸ナトリウム水溶液も濃度によっては手指の消毒にも使えるのですが注意が必要です。

次亜塩素酸ナトリウム水溶液にはタンパク質を分解する性質があり、それによってウイルスや細菌を死滅させるのに絶大な効果を発揮します。

しかし、人間の皮膚も角質層というタンパク質の一種でできているため、濃度を誤って皮膚に付着するとダメージを与えることになります。

万が一、付着した場合はすぐにしっかり水で洗い流してください。

次亜塩素酸ナトリウム水溶液を消毒に用いる際には製品の記載をよく確認し、使用用途に合わせて水で薄める作業を行います。

エタノールの種類

これまでの説明では「エタノール」という言葉で一括りにしておりましたが、エタノールは「無水エタノール」「エタノール」「消毒用エタノール」の3種類に分かれています。

これらはアルコール濃度の違いによって分類されており、濃度の違いから性質も異なります。

この章では種類別のご説明とそれぞれの効果についてお伝えします。

エタノール消毒液には種類がある

無水エタノール

無水エタノールはアルコール濃度が99.5vol%と、水分をほぼ含まない純度の高いエタノールです。

洗浄力は高いのですが、すぐに蒸発してしまうという特性も持っています。

そして、アルコール濃度が高いほど刺激も強いので肌につくとダメージも大きく水分を吸ってしまいます。

そのため、無水エタノールは人や一般的な消毒には向いていません。

用途としては水拭きができない電化製品など、ものへの清掃に無水エタノールは多く使われています。

エタノール

エタノールは95.1〜96.9vol%のアルコール濃度をさします。

使い道としては無水エタノールとほぼ同様で、薄めて消毒用エタノールにすることが可能です。

市販で売っているものについては、料金も無水エタノールに比べるとやや安価なことが多いです。

消毒用エタノール

消毒用エタノールはアルコール濃度が76.9〜81.4vol%とエタノール濃度が最も低いエタノールです。

「消毒」と名がついている通り、アルコール濃度が低い分蒸発もしづらいため、多くの消毒に適しています。

エタノールで不活性化できるウイルスの消毒として、公共機関や商業施設、病院などの消毒に用いられます。

特に、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどの集団感染を防ぐという意味では、非常に役立つのがこの消毒用エタノールです。

エタノール消毒液の濃度で変わるウイルスへの効果

先ほどの繰り返しになりますが、エタノールは濃度によって大きく性質が異なります。

では実際、どの濃度に対してそれぞれどのような効果があるのかについて、エタノールの濃度別に詳しい解説をしていきます。

エタノール消毒液の濃度で変わるウイルスへの効果

WHOのガイドラインによる濃度範囲

殺菌・除菌・消毒に使用されるエタノールの至適濃度範囲は60〜80v/v%と提示されており、その理由として以下のものがあがっています。

・ほとんどの微生物(ウイルスや細菌を含む)

・20〜30秒ほどの短時間で効果を得ることができる

・病院をはじめとする臨床現場でも利用できる

・皮膚への刺激も最小限に抑えられる

・特別な設備が必要ない

ただし、血液や体液など目に見えた汚れのある場合は、先に石鹸と流水で手洗いをしてからアルコール消毒をすることが必要となります。

エタノール濃度63v/v%以下

エタノール濃度が63v/v%以下の消毒液の場合、ウイルスや細菌の消毒に5分以上の時間を必要とします。

消毒ができないわけではないのですが、現実的に消毒の度に5分も時間を取られていては生活や仕事に大きな支障が出てしまうでしょう。

ウイルスの消毒をするメカニズムには、細胞膜や蛋白構造に急速な変化を起こして一気に破壊させることが必要なため、エタノール濃度の低い消毒液は一般的に流通させる商品としては不十分なのです。

エタノール濃度85v/v%以上

エタノール濃度が高すぎるのも注意が必要です。

一見、無水エタノールのような商品は「高濃度=殺菌作用が強そう」というイメージを持たれる場合があるのですが、ウイルスへの殺菌効果はそこまで期待できません。

エタノールは揮発性が高いため、これだけ高濃度なものだとすぐに蒸発してしまいます。

ウイルスへの消毒効果を最大限発揮するには、水分含有量が20%以上になっている状態が理想です。

エタノール消毒液を購入する際の注意点

エタノールの概要や基礎知識について理解をしていただいたところで、次は実際にエタノール消毒液を購入する時の注意点についてまとめます。

ドラッグストアには多くのエタノール消毒液が販売されていますが、正直なところ一般手には消費者の方にとって、「細かい違いについてよく分からない」という方が大半かと思います。

とは言っても細かな知識を1つ1つ書いていくとキリがないため、この章ではエタノール消毒液を購入する前に最低限知っておきたい基礎知識について触れております。

様々な種類があるエタノール消毒液

エタノール消毒液は製造販売に許可が必要

コロナウイルスが蔓延して、「消毒液が売り切れ続出となっている。自分も消毒液を作って売ろう!」と思う方が一部いたようです。

ですが、エタノール消毒液を製造して販売するには許可が必要となるため注意しておきましょう。

医薬品の販売には、「医薬品・医療機器等の品質・有効性及び安全性の確保等に関する法律」により許可が必要と定められているのです。

医薬品でなければ販売許可は不要なのですが、「殺菌」「消毒」のような医薬品的な効能効果を広告することはできません。

販売以外に製造や輸入をする場合も「アルコール事業法」という法律で経済産業省から許可を得る必要があります。

エタノール消毒液を購入する前に、「販売されているところはどこか」「販売許可は取れているか」を注意して見ておきましょう。

そして、もしあなたの周りで消毒液を作って販売しようとしている人がいる場合は、これらの確認も必要になります。

エタノール消毒液の成分表示だけでは不明確な点

販売許可以外にも、もう1つ注意点があります。

それはエタノール消毒における効果は成分表示だけでは分からないということです。

そのため「〇〇会社の△△という商品は手指消毒に使えますか?」「〜成分は手指消毒に効果があるのですか?」などという質問は、専門家であっても答えられません。

先ほど手指消毒に適したアルコールの濃度について解説しましたが、医薬品なのか工業用なのか食品添加物なのかによって、手指消毒に使えるか又は、他の使用用途に変わってくるのです。

ここまでの表示はされていないことが多く、販売している会社や店舗も正しい知識を持っているかどうかは分かりません。

もし、どうしても使用用途について正確な情報を知りたい場合は、メーカーに直接問い合わせるのが確実です。

ウイルスをエタノール消毒液で消毒するイメージ

ウイルスをエタノールで消毒する正しい方法

では、実際にエタノール消毒を使用する際に知っておきたい「エタノール消毒の正しい使用方法」についてご説明します。

適切なエタノール消毒の選び方をしたとしても、実際の使用方法が適切でないと本来の消毒・除菌効果が発揮されません。

以下のポイント2点を押さえておきましょう。

消毒・除菌できないウイルスもある

ウイルスや細菌の種類によっては、エタノール消毒では消毒・除菌できないものもあります。

その理由としては繰り返しになりますが、エタノール消毒はアルコールによってエンベロープでできた細胞膜を破壊し、ウイルスや細菌にダメージを与えます。

つまり、エンベロープ(細胞膜)を持っていないものに対しては効果がないのです。

エタノール消毒による消毒効果がないものの例として、ノロウイルスやロタウイルスのようなエンベロープを持たないウイルス、ウェルシュ菌・セレウス菌・ボツリヌス菌のような芽胞を形成する細菌があります。

芽胞とは、菌が生存できないような環境(高温・乾燥・栄養状態が不良)になると、バリア機能を持つ固い殻を生成する性質を持った細菌です。

芽胞はとても強固であり、エタノールへの耐性も持っています。

そのため、エタノール消毒は、エンベロープを持つインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどには効果がありますが、全てのウイルスや細菌に対して効果があるわけではないことを押さえておきましょう。

指の間や爪部分までエタノール消毒を

エタノール消毒液で手を消毒する際のポイントとして気を付けなければならないのが1番汚れが多い指先です。

指先はいろんなものに直接触れる部分なので、その分ウイルスや細菌が多いため、エタノール消毒をしっかり擦り込ませましょう。

そして、多くの方がしっかり汚れを落とし切れていない部分は、「指の間」と「爪部分」です。

ここは、消毒液が行き届きにくい範囲であり意識をしていないとエタノール消毒後であっても、細菌がほとんど減っていないということもありえます。

そうなるとせっかく行った消毒の効果が十分に発揮されません。

このような事態を防ぐためにも、特に指の間と爪までエタノール消毒を行き届かせることを意識しましょう。

手洗い後しっかり乾燥させてから消毒をすること

手洗い後にしっかり手指を乾かすことも大切です。

日本食品微生物学会雑誌の「手洗い時における乾燥方法がエタノールの手指消毒効果に及ぼす影響」という研究では、石鹸と水道水で手を洗ってすぐにエタノール消毒をした場合の細菌数を調査しました。

この時「手洗い前に比べて手指の細菌数は減少したが、十分な除菌効果のある状態とは言えなかった」というデータがあります。

つまり、エタノール消毒は手洗い後すぐにするのではなく、ある程度手指を乾燥させてから、もしくは清潔なペーパータオルなどで拭き取ってから行いましょう。

そして、消毒をしてから30秒ほどたつとウイルスや細菌が死滅するといわれています。

エタノール消毒液を理解して安心して利用できるイメージ

まとめ

以上エタノール消毒の基礎知識についてまとめました。

消毒などの化学製品は専門用語も多く、なかなか一般の方には理解が難しいものです。

今回の「消毒と除菌・殺菌・滅菌・抗菌の違い」をしっかり理解し使用目的別で消毒液の正しい選び方が判断できるのではないかと思います。

そして、エタノール消毒によるウイルスや細菌の消毒方法を徹底的におこない、感染拡大防止の一端を担うことができたら幸いです。

今後も、新型コロナウイルスはいつ感染拡大するか分かりません。

特に冬場はウイルスが増殖・感染しやすい時期となりますので、正しい手指消毒の知識を身につけて、しっかり自己防衛できる状態になっておきましょう。

弊社、Kurashiの救助隊ではウイルス消毒の専門に特化した特殊清掃部隊があります。

ウイルス感染の防止や予防など、お困り事がございましたらお気軽にご相談ください。

コロナウイルス消毒・除菌・抗菌|Kurashiの救助隊 – 特殊清掃部隊

電話対応時間:24時間365日対応  TEL:0120-921-859

 

資料参考サイト:
https://www.kenei-pharm.com/medical/countermeasure/microbe/08.php
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syoudoku_00001.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsfm/26/4/26_4_208/_article/-char/ja/
https://www.chinoshiosya.com/news/feature/alcohol-disinfection_effect-by-concentration/
https://www.musui-ethanol.net/column/column01/